SW を2日目でドロップアウトした人間が考える、SW の利点と限界
Startup Weekend Advent Calendar 2016 - Adventarの記事です。
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生存バイアスという現象があります。少なくない落伍者、脱落者の存在を無視して、生き残った一部のみを見て物事を判断してしまうことです。 Startup Weekend(以後「SW」) に参加して、このようなアドベントカレンダーに書いたり、オーガナイザーになったり、何回も参加したりする方は、SW のことをとても気に入っている方です。そのような方が多く広めますが、少なくない人が、一度参加しただけで、複数回参加することはありませんし、オーガナイザーをされる方も、大半ではありません。また結構な割合の方が、途中で脱落します。
自分は3回参加して、そのうち最後は、2日目の途中で参加を取りやめました。自分が、「SWが馴染めなかった人」の典型からは程遠いと思います(どちらかというと「ハマった」「気に入った」方です)が、カレンダーに何か書こうと考える中では、比較的「冷めた」かんじで書けるのでは、と思い、一筆書かせていただく所存でございます。
尚、不快になる方が極力少なくなるよう、「奥歯に物が挟まった」ような内容になるかと思います。 また、これはあくまで自分の見解です。SW の運営側の方からは、「こいつ分かってないなぁ」となる可能性が非常に高いです。その点ご配慮ください。
目次
- 最初に結論:自分が考える SW が向く人、向かない人
- 自分は、このような方が向いていると思われます
- そして、このような方は、あまりオススメしません
- 自分が考える SW の目的、工夫、犠牲にしているもの
- SW の目的:スピード感
- スピード感を出すための工夫は?
- そのために「切り捨てられる」ものは?
- 失敗は許されるのか?
- しがらみがないということ
- SW が「しがらみ」になるとき
- SW の出会いはすばらしいか?
- 自分が考える、SWの「身も蓋もない」利点と限界
- お手軽ということに関して補足
- 自分は、このような方が向いていると思われます
- そして、このような方は、あまりオススメしません
- おまけ
最初に結論:自分が考える SW が向く人、向かない人
SW は「起業の一連の流れを54時間で体験する」イベントで、いろんな「現実社会とはちょっと離れている」仕掛けや工夫があります。それらは当然効果はあるのですが、自ずと限界、副作用が存在します。どんな病気にも効く薬がないように、「効く人」「効かない人(かえって悪くなる人)」が出てくるのは当然だと思われます。
自分は、このような方が向いていると思われます
- 会社が面白くない人
- 起業ということに「なんとなく」興味がある人
- 何をしたいのかよく分からないけど、手っ取り早く何かをしてみたい人
- 人前で喋る経験をして見たい人
- 体力のない人
- 要は、0.0001 → 1 をしたいひと
- おいしいご飯を食べるのが好きな人(SW Tokyo の場合。他は分かりません)
そして、このような方は、あまりオススメしません
- 自分の力を試したい人
- 「自分のXXで、YYな人を笑顔にしたい」というレベルで、目標の決まっている人
- 「起業しないといけない」という義務感のある人
- 家族を大切にしている人。趣味を大事にしている人
- 職場や学校の友人と一緒に参加を考えている人
- 体力に自信のない人
- 要は、1 → 2 にしたい人
自分が考える SW の目的、工夫、犠牲にしているもの
自分が認識している、「SWの利点」と感じているものは下記です。これは、参加された方の中では、大きく認識はズレていないと思われます。
- スピード感がすごい
- 失敗が許される
- しがらみがない。出会いがある
このように書くと、とても良いことのように見えます。では、下のように言い換えてみましょう。
- 意思決定のプロセスが雑
- 失敗が許されない大きな仕事に取りかかれない
- 目の前の人を家族や友人や職場の仲間のように大切にする必要はない。どうせ月曜になったら他人だ
これは「良い」「悪い」ではなく、SWの「特徴」です。 (特に最後のヤツ、自分はそんなこと考えていませんでしたよ?)
SW の目的:スピード感
54 時間で、一連の流れを経験することです。 つまり、自分が挙げた 3つ の利点の中で最も大切なものは、それは「スピード感がすごい」です。 そのために、過半数のチームが最終プレゼンができるようにするために、アジェンダ作りを始めとする準備をするはずです。
スピード感を出すための工夫は?
それは、1つ1つのプロセスをスピード感を持って、悪く言えば雑に進めている点です。
特に、「最初のピッチ」の段階で、かなりの運(バクチ)要素があります。
M-1 の笑い飯のように「ピッチ通過率100%の剛の者」がいらっしゃるようですが、確率的に考えて、「工夫をすれば必ずそれができる」というのはそれこそ生存バイアスです。あり得ないと考えましょう。 では、プランをじっくり考えることができるのでしょうか。
- ピッチをする側は、すでに始めている事業についてピッチすることを禁じられています(←「一連の流れ」を経験するための制限)。本気なら、事前に何かやりませんか?
- ピッチを受ける側は、「命と財産をかけてもいい」と思えるプランを、この短時間で判断できますか? MVP も見ずに?
結局は「運」ですが、現実よりも、その要素が大きいと判断します。 孫さんは Alibaba に20億円の投資を 5分で決めましたが、孫さんほどの経験と決裁権と業務知識があっても、5分もかかってしまう、という見方もできます。SW で、1つのピッチにかけられる検討時間は果たして何分でしょうか。
そのために「切り捨てられる」ものは?
本当に頭のおかしいアイディア、というのは浮かび上がりません。 ある程度キャッチーなアイディアが採用される傾向があるかと思います。 ウォルトディズニーのように粘り強く、自分自身のプランで検討を重ねチャンスを得るという経験をすることは難しいと思われますし、本気で粘り強く何かをなしたい人にとっては、あまり期待する効果はないのでは、と思います。 また、伝えたい属性の人が、SW の参加者と近いとは限らず、また、SW の参加者に受けるような(プレゼン手法はともかく)内容を考えるのは、本末転倒と思われます。
SW のピッチで、AirBandB が票を得ることは難しいでしょう。自分ならメルカリにも票を入れません(ちなみに自分は学生の頃、unoh でアルバイトしてました)
あるプランを考えて、それを実現したくて、それでもピッチに落ちた人は、心の持ちよう次第ですが、無為な48時間を過ごすこともあり得ると思います。
失敗は許されるのか?
逆に聞きます。実際の仕事や生活において、失敗は許されませんか?
許されるものと許されないものがあり、許されないとしたら、理由は下記でしょう。
- 周りの人(お客様、仲間、公共の財産)に被害が出る(周りの問題)
- 恥ずかしい、みっともない、評価が下がる(自分の問題)
前者に関しては、残念ながら、SW の 54時間で、そのレベルの成果がでる可能性は非常に低いと思われますし、もし出たとしても、契約を結んでそれを不履行するという失敗はやってはいけないでしょう。
後者に関しては、自分が最も SW の特徴というか、「異空間」と感じるところです。それは 3つ目の特徴と、そのまま密接に関連します。
しがらみがないということ
「旅の恥は書き捨て」って言いますよね?自分はそのようなことはしないのですが、SW はそのような意味で「旅」です。普段のまわりにいないタイプの人に、強制的に会い、話し、運命を共にすることになります。
当然、良いことばかりではないですよね? 自分は、とても良いことと考えます。
だって、気に入らなければもう会わなければいいんだもん
真剣に真面目に言っています。 もちろん、素敵な方に出会える可能性があります現実と同様に。で、いやな方に当たった場合、縁を切るのは、現実とは比べものにならないくらい、簡単に出来ます。
SW は、人との出会いという意味では、とてつもなくローリスクハイリターンです 乗るしかない このビッグウェーブに
SW が「しがらみ」になるとき
一度参加して最後まで到達して現実に戻り、その現実で動き出したとき、SW で得た仲間は「しがらみ」になり得ます。 多くの場合、「勇気」がもらえると思いますが、うまくいかない自分、動きすらしていない自分を「はずかしく」「みっともなく」思うことがあります。 また、複数回参加すると、以前一緒だった方に会うこともあると思います(参加者でも、オーガナイザーでも)。そのような方が同じ空間にいるときに、出会いをバクチできるか、と考えると、厳しいかなぁ、と思います。
あと当然ですが、「現実世界の仲間」と一緒に参加すると、それはしがらみになると思います。 特に SW では、以後の人生ではほっとんど役に立たない紙切れ一枚の価値しかない順位づけというフェーズが存在し、それが、なーーーんの役にも立たないにも関わらず、現実の既存の人間関係に本当につまらない影響を及ぼしてしまう可能性があります。
SW の出会いはすばらしいか?
職場を始めとする周りにいない方に出会うという機会、という意味では、他のイベントだったり趣味の集まりだったり婚活パーティだったり勉強会だったりと比較して、気軽さ(費用の安さ、縁の切りやすさ)以外に、特に違いはないかなぁ、と。
自分が考える、SWの「身も蓋もない」利点と限界
はい。
利点としては以下です。
- とにかくお手軽である
- スピード感と出会いが、普段の生活とは違うリズム感で流れる
- 合わなければやめればいいのです ← 最重要
限界としては下記です。
- あくまでシミュレーション(精神と時の部屋)であり、本気ならもっと良い手段はいくつでも見つかる
- 目標があったり、他に大切なもの(家族や趣味)を犠牲にしてもいいと胸を張って言えるほどのものではない
- 自分で制御する余地のない、運の要素が強すぎる
お手軽ということに関して補足
下記は SW Tokyo 限定です。他は分かりません。
SW Tokyo は参加費 9,000円ですが、2日目朝昼晩と3日目朝昼、3日目夜のパーティはタイガ飯です。自分ならぶっちゃけ、「それを6食食べるためだけに」9,000円払います。タマリバの水曜タイガ飯にいきなり行くのもハードル高いと思います。まずは、おいしいものを食べようという動機だけでもよいと思います。
自分は、このような方が向いていると思われます
- 会社が面白くない人 ←まずは人に会ってみましょう。いい人に出会える可能性はかなり高いし、いざとなったら縁を切ればいいのです
- 起業ということに「なんとなく」興味がある人 ←やってみましょう。合わなければやめればいいのです
- 何をしたいのかよく分からないけど、手っ取り早く何かをしてみたい人 ←まずは周りの人と元気勇気をシェアしましょう。合わないと思えば帰ればいいのです
- 人前で喋る経験をして見たい人 ←やってみましょう。誰も、あなたの失敗を責めません。どーーせみんな大したことないんだもん
- 体力のない人 ←体力の大切さを痛感してましょう。自分は、SW に参加したことがきっかけで 40kg 痩せました
- 要は、0.0001 → 1 をしたいひと ←何かを体験してみたい人。その何かがスタートアップかもしれない人
- おいしいご飯を食べるのが好きな人(SW Tokyo の場合。他は分かりません)←大事ですよ?
そして、このような方は、あまりオススメしません
- 自分の力を試したい人 ←コーチもジャッジも、結構いい加減ですよ?あまり期待しない方が。誤審でイライラしたくないでしょ?
- 「自分のXXで、YYな人を笑顔にしたい」というレベルで、目標の決まっている人 ←いや SW とか遊んでないで、それをちゃんとやれよ
- 「起業しないといけない」という義務感のある人 ←いや、人類のほとんどはスタートアップしないからさ、まぁ、楽にいこうよ。そんな気持ちでやっても続かないと思いますよ?週末はパーっと遊びましょう!
- 家族を大切にしている人。趣味を大事にしている人 ←家族サービスしなよ。。。
- 職場や学校の友人と一緒に参加を考えている人 ←身近な人と比べられるのはきついと思うよ?
- 体力に自信のない人 ←自覚しているなら、工夫改善しましょう。そして週末はしっかり休みましょう。その方が、平日に生産性を上げて、より多くの人を幸せにできます
- 要は、1 → 2 にしたい人←スタートアップに限らず、既に業を起こしている人、具体的に起こしたい人
おまけ
自分は、まぁまず間違いなく SW にはもう参加しないと思います。勿論、オーガナイザーをやることもないでしょう。
過去の SW でご縁の出来たオーガナイザーの方に伺ったことがあります。「あなたは何故オーガナイザーをやっているんですか?」
その方はおっしゃいました。「このプログラムが人を成長させるから」
だそうです。